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コピルアック(コピルアク) インドネシアのカレー4

2013.2.14

インドネシア人の家に行くとたいがい家族の写真がたくさん居間に飾ってあります。卒業式の写真、結婚式の写真、家族旅行の写真・・・・。

 

ひと世帯の人数は多めであると感じます。1つの家に3世代が同居していることは珍しくなく、むしろ一人暮らしをしている人を探すほうが難しいでしょう。核家族とは縁が無いように見えます。

 

ところが、はたから見ると「なかよし」と思われる家族でも実は内情はそうでもなく、夫婦が泥沼の離婚劇に直面しているといった話も良く聞きます。しばしば聞く話は「亭主が働かず遊んでばかりいる」、「女房が怖い・・・・」などなどです。

 

相棒のイカサンとワイフは中学時代からの付き合いで、結婚も割と早かったためもう既に恋人気分は全くなく、家族を運営するパートナーといったほうが良いでしょう。

 

ジャワ人の男性というのはとても温厚で、よほどのことが無い限り怒ったり、自分の感情をむき出しにすることはありません。イカサンは典型的なジャワ人男性で、ご多分に漏れず優しく寛容性があるのはよいのですが、ワイフや娘に甘いという印象をぬぐえません。

 

彼らの会話はジャワ語の為何を言っているのかよくわからないのですが、イカサンがワイフにやり込められてしょげている場面によく遭遇します。

 

そんなイカサンも「Kokiが日本から持ってきて作ったカレーはどうやら本当にすごいらしい、任せておけ、成功間違い無し!!」とワイフのモチベーションを上げることに成功しているようで、彼のこのカレービジネスはもう既に頭の中に出来上がっているのであります。

 

「資金繰りはKokiに任せ、実際の調理はワイフに頼み、自分は奥のテーブルでテレビを見てくつろぎながら従業員をこき使う」。おおかたそんなプランでしょう。イカサンの考えそうなことです。

 

それもこれもすべてはカレーの味次第です。味が抜群であれば、彼の考えているお気楽プランは現実味を帯びてきます。値段がお手頃で美味しければPati市民から受け入れられるのは確実です。

 

インドネシアは日本ほど物やサービスが十分マーケットに行きわたっているわけではありません。日本では当たり前に手に入るようなものが、インドネシアでは入手困難ということも良くあります。文房具や衣類など、品ぞろえはそう多くありません。

 

また、インドネシア人の性格はどうやら「新しいもの好き」であるようで、多少値がはっても新しい物でそれなりの価値があれば触手は伸びるようです。

 

つまりカレーなどはまさにインドネシア人向きのアイテムと言えるのでありまして、イカサンも私も大いに期待していたのであります。

 

さて、何とかカレーのルーを日本から取り寄せて作ったカレーライスの試食会の日がやって参りました。この時私はまだLuboyo村(この章をご参照ください)に住んでいたので、ご近所さんを試食会に招いても良かったのですが、「この秘密は絶対に知られてはマズイ!!」ということもあり、結局はイカサンとワイフだけが試食をすることになったのです。

 

冷蔵庫に一晩寝かせておいたカレーは味が良く馴染んでおり、どこに出しても恥ずかしくないカレーに仕上がっています。民族の違いを超え、万人が納得するものであることは火を見るより明らか。

 

いつもは愛想のないイカサンのワイフですが、今日は少しばかり様子が違いSelamat Siang(スラマ・ティアン=こんにちは)とのこと!! 彼女の期待の高さがうかがえます。イカサンも「Kokiカレーはまだ??」ともう待ちきれない様子。

 

「日本人がどれだけカレーが好きか」、「日本におけるカレーの市場とは」、「カレーがうまい日本の店は」・・・・。うんちくを30分くらい話して聞かせようかと思いましたが、かわいそうなのでやめました。

 

そしてついにカレーが登場!!

 

写真が無いのが残念ですが、どこからどう見てもこれ以上はないうまそうなカレーです。もちろん味も抜群です。

 

ところが、カレーを見たとたん、彼らが少し引いたのを私は見逃しませんでした。香りではなく、見ただけで・・・・。

 

少し嫌な予感がしました。

 

このブログでもよく登場するNasi Gandul(ナシ・ガンドゥール=Patiの郷土料理)を最初に食べた時のことを思い出したからです。今でこそ大好きなNasi Gandulですが、最初食べた時は正直「もう二度と食べることはないだろうな・・・・」と思いました。それは味の問題よりも見た目が原因でした。

 

この写真でお分かりの通りNasi Gandulはいわゆる完全な“猫めし”です。日本ではあまり食べることのないタイプの食べ物です。味よりも前に見た目でちょっと引いてしまったのであります。

 

そしてイカサン&ワイフが同じ思いをしていると直感しました。そう、私がNasi Gandulと初めて対面した時のように・・・・。

 

彼らの困惑した顔を笑うことが出来ませんでした。あれだけ苦労して手に入れ作ったカレーが今まさに見た目で否定されようとしているからです。

 

「これどうやって食べるの?? ぐちゃぐちゃにかき混ぜるの?」。イカサンは本当にどうやって食べるのかわからないようです。ワイフも同じです。

 

「ぐちゃぐちゃにかき混ぜでもOKだし、ご飯とルーを別々に食べ、口の中か胃の中でぐちゃぐちゃにしてもOKだ」。自分で自分の顔が引きつっているのが何となくわかりました。

 

イカサンとワイフは皿の上でカレーとご飯をぐちゃぐちゃに混ぜ、やっとスプーンを口に運びました。

 

・・・・予感は的中しました。

 

イカサンのワイフはカレーをひと口食べて皿をテーブルに置き、もう二度と持つことはありませんでした。イカサンは何とか2口目を食べた後、同じく手を付けることはありませんでした。

 

「今日は朝ごはんを遅めに食べたからもうお腹がいっぱいで・・・・」。イカサンの優しさは典型的なジャワ人のそれです。人を傷つけたり、争うことを極端に嫌います。

 

そしてワイフはイカサンに対しては遠慮会釈なしにものを言います。おそらくイカサンはカレービジネスの夢をとても大きく語ったことは容易に想像できます。そして大きく語った分だけ期待はずれだった場合の穴埋めが必要になります。

 

ワイフの愛想はいつもの調子に戻っていました。つまりあまり愛想が無いということです。そしてイカサンは青ざめた顔でバイクの後ろに彼女をのせ背中を丸め帰ってゆきました。

 

砕け散ったカレービジネス。そしてワイフへの言い訳・・・・。「事後処理が大変だ」と他人事のようにうなだれる後姿を見送りました。

 

その後カレーのビジネスに関する会話を私とイカサンで交わすことはありませんでしたが、私が一時帰国した際、ある東京在住のインドネシア人にこの話をしたところ、「カレーの味はインドネシア人にはなじまない。しかもあの中途半端な粘り気はダメ」という意見。

 

しかし彼はカレーが大好きです。「君は食べれんじゃん!?」との問いに「慣れればカレーは最高だね~」とのこと。

 

Nasi GandulもSwike(スウェキー=カエルの煮込み)も確かに慣れれば最高ですが、「日本人にはなかなか受け入れられないだろう」と、このカレー問題を自己消化させたのでありました。

 

 

カレービジネスを始めようとする際、ある知人から「これがカレーだよ」と言われたのがこの写真。Gulai(グレ)といいます。バンドゥンに比較的近いCirebonという街に出張に行った際に立ち寄ったレストランで撮影したものです。ヤギの肉を煮こんだものですが、カレーとは程遠い味でした。

 

次回はコピルアックの話に戻ります。

 

Sampai Jumpa Lagi,

Koki