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コピルアック(コピルアク) 日本人の威厳と存在をかけた争い・・・・。

2012.12.20

私がインドネシアで起業をする前の仕事は製造業と関係がある仕事でした。分野は工業分野です。

 

工業分野に限らず製造業には「製造工程時間の短縮=原価低減」という基本的な考えがあります。製造工程時間短縮→人手を減らすことが出来る→作業人員低減→工程にかかる人件費を低く抑えることが出来る→原価低減

 

といった具合です。例えばの話ですが、掃除機を組み立てる製造工程で「接着剤」が使用されるとします。接着剤のボトルは机の上にあります。作業者は接着剤を使う際、ボトルの位置を確認しながら手を伸ばし、ボトルをつかみます。

 

ところがこの工程には改善の余地があると思われます。それは作業者が「ボトルの位置を確認する」という工程です。ボトルの位置を確認するのに必要な秒数が0.5秒だとします。頭をボトルの方向へ向けなければならないからです。しかし、ボトルが必ず決められた位置にあれば、頭を動かす必要はありません。左手で何か作業をしながら、目視せずに右手でボトルをつかむことが出来れば0.5秒かそれ以上、この工程は時間が短縮されたことになります。

 

たかだか0.5秒と思われるかもしれませんが、この0.5秒が365日、何百人の作業分積み重なると結構な時間が短縮される計算になります。そしてこの「ボトルの位置を確認する」という工程以外の工程でも同じように時間低減が可能になれば、製造工程時間短縮というのは全体的に非常にボリュームのあるものになり、つまりは原価低減にも有効になるわけです。

 

工業分野の製造業工程技術担当者はだいたいストップウォッチを持っています。各工程で時間がどれくらいかかっているかをチェックし、改善前と後での効果を測定するわけです。

 

ところで私たちがLJAインドネシアで行っているコピルアックのビジネスも、製造業に属します。つまり効率的な製造プロセスを確立することが出来れば最終的には原価低減につながることになるわけです。

 

そういった意味でも昨日、新米のマダムが私に言い放った「この工程はちょっと・・・・」という言葉は聞き捨てなりませんでした。暴れん坊将軍のマツケンのように「成敗!!」といいたいところではありましたが、ぐっとこらえる忍耐力はかろうじて残っていました。

 

彼女に言いました。「別の良い方法があるのですか?」と。

 

彼女はまくしたてるように言いました。どうやら相当自信があるようです。「アンタのプロセスはA-B-ざる―C-D-E-F-Gだろ?これは長すぎるんだよ」。

 

全くもって彼女の言う通りですが、そんなことは分かり切ったことです。しかし散々考えていろいろやってみた結果これ以上短くならなかったのです。「いまさら何言ってんだ?」。

 

「成敗」という言葉が再び頭をよぎりました。私が何を考えているか知らず彼女はつづけました。

 

「まずAとBをひとまとめにして、処理量を多くするんだよ。そうして今2人いるのを1人にするんだよ。そんでもってCのあとにもう一回ざるの工程を入れるんだよ。そうすればFとGはいらなくなるだろ!!」

 

「このマダム何言ってんだ?? そんなことすればざるの工程前での滞留時間が異常に長くなりそのあとの工程がずっと暇なままじゃん!?」。製造工程の中で「滞留」というのは良くない現象です。スムースにものが流れている状況を続けなければいけません。

 

怒りはイカサンとギアントに向きました。「なんか変なマダム連れてきたよ」と。心の中で舌打ち100連発を開始しました。これを製造工程のなんたるかが全くわかってない人に、インドネシア語で説明するにはあまりに面倒くさかったからです。

 

ところが・・・・。心の中で舌打ちを20回した頃、ふと気が付きました。

 

「いや、ちょっと待てよ・・・・。確かにこの方法は、スタートの滞留時間はかなり長いが、Cの後にもう一度ざるの工程を入れればそのあとはスムースに流れるかもしれない・・・・。しかもそうすれば確かにFとGはいらなくなる・・・・」。

 

私が考えている間彼女はバイトの仲間たちにジャワ語でこの工程変更の利点を説明しています。イカサンもギアントも彼女の話に聞き入っています。

 

彼女の提案はハタとひざを打つものでありました「そうか、この手があったか!!」と。言われてみれば簡単なことでした。なんでこれに気が付かなかったのだろう・・・・。一見無駄に見える最初の工程が、後でざる工程をもう一回入れることでスムースに流れることになるのです。「これぞ絵にかいたような工程改善。まさしく凄腕!!」

 

高校時代の隣のクラスの女の子を思い出しました。とても地味ながら歌で私をシビレさせたあの彼女を。ライブでHeartの“Never”を歌い上げ、隣の女の子を泣かせたあの地味な彼女を。

 

そして、彼女のせいで全く存在感のなくなってしまった共同ライブのバンドたちを・・・・。

 

感心している余裕はありませんでした。彼女の説明にバイトの皆から賛同の声が上がりました。“Betul(そうだ)”,”Iya, Benar(その通りだ)”と。イカサンとギアントも心配そうに私を見つめています。

 

「存在感」。私にとってこれは重要な意味を持ちます。彼女の提案した工程にいくつかケチをつけてみようと頭を高速回転させました。仮に彼女の提案を認めてしまえば今まで築き上げてきたボスとしての威厳はもろくも崩れ去るからです。

 

イカサンやギアント、バイトの皆はこう思うでしょう「何日もかかってKokiが作り上げた工程が新米マダムの提案によってもろくも覆された。Koki、大したことなし!!」と。

 

しかし私が考え抜いたケチごときはどれもすぐに反論されるレベルのものでした。

 

“Gimana(どうなのよ)?”

 

彼女は私に結論を迫りました。膝の震えは意志の力で抑えることは出来ず、もう暴れん坊将軍もイメージできませんでした。代わりに頭に思い浮かんだのは水戸黄門に悪事を暴かれた悪代官が黄門さまをキッとにらむ開き直りでした。

 

「であえ、であえ!!」という言葉は出ませんでした。インドネシア語でなんと言えばいいのかわからなかったからです。そのかわり彼女をキッとにらみ、言いました“Mau coba(試してみようじゃありませんか)”

 

彼女はテキパキとジャワ語で工程の組み替え指示をバイトに出しました。ざるもすぐに用意され、彼女の提案した工程が出来上がりました。そしてすぐさま新しい工程での作業が始まりました。

 

ギアントが私に言いました。「時間、計ってみようか・・・・」と。

 

彼の申し出を断りました。私が作った工程よりも彼女の工程のほうが効率的で理にかなっていることは火を見るより明らかだったからです。

 

「“威厳”ってインドネシア語でなんていうんだろう?」後で事務所に帰って辞書で調べようと思いました。まだ朝8:00の出来事でした。

 

 

左の赤いシャツの女性が新米マダムです。ちなみに奥のシロBatikでキメているのが私です。

 

Sampai Jumpa Lagi,

Koki