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コピルアック(コピルアク) インドネシアのお菓子

2012.11.23

インドネシア料理というのは皆様にあまりなじみがないかと思います。良く聞く料理はおそらくNasi Goreng(ナシ・ゴレン=インドネシア版チャーハン)くらいでしょう。

 

もちろん味付けは日本料理とは全く違います。また、同じ東南アジアの国であってもタイ料理ともずいぶん異なります。言葉で表現するのは難しいのですが、インドネシア人に怒られるのを覚悟で申し上げますと、あまり日本人の味覚に合うものではありません。控えめに申し上げるとしたらの話ではあるのですが・・・・。

 

私自身、インドネシアに渡った最初の一ヵ月は食べ物になじむことがどうしても出来ず苦労いたしました。特に辛いものはもともとダメだったのですが、こちらの食べ物のほとんどは激辛で、慣れるまでは唐辛子をよけながら料理を食べるという、何とも情けない食べ方をしておりました。

 

Warung(屋台)のマダムやマスターからは、「アンタ、唐辛子食べないのか?」とよくからかわれたものです。そんな私も今では生の唐辛子をかじることが出来るくらいになりました。

 

今、コピルアックの精製所は中部ジャワ州Pati県のPanjunanという村にあります。その精製所のそばに私が家を借りているのですが、実はこのPanjunanの前、同じPati県にあるLuboyoという村に私は住んでいました。

 

Luboyo村については以前この章で少しご紹介しております。

 

最初はあまりおいしいと思わなかったインドネシア料理に、私が慣れることが出来たのはLuboyo村でお隣さんだった主婦のおかげでした。この女性、名前をTinyさんといいます。

 

私は食材を近所の店で買い自炊をしていたのですが、たまに隣のTinyさんが気を使って料理を持ってきてくれます。週に2回くらいです。見た目は普通の家庭料理なのですが、このTinyさん、料理の腕前は抜群で持ってきて下さる料理全てが絶品でした。相変わらず激辛ではあったのですが、このTinyさんの料理をいただくうちに、激辛もさほど苦にはならず完全にインドネシアの味に慣れたのであります。

 

少ししてから分かったのですが、彼女はLuboyo村では名うての料理人で、この村や近隣の村で結婚式やイスラムの宗教行事等がある際のケータリングは彼女がだいたい引き受けておりました。

 

ケータリングとはつまり、式で出される食事やお土産のお弁当などを提供することで、式の前日や当日など、たいがい彼女の家に10名くらいのお手伝いや、手下のような若い女性がワラワラと集まってきて、彼女の指示で料理を作るのであります。

 

もちろん最終的な味付けは彼女の役目です。「アンタこれチト甘いよ」、「OK」など、いわば調理責任者の立場です。きびきびと指示を出し、着々と仕事を進めるのを隣から眺めていると、彼女のふくよかな体型もこの時ばかりは頼もしく思われるのでありました。

 

ある日、彼女からある食べ物をもらいました。結婚式のケータリングで出すもののようで、私にくれたのです。“Kue”(クエ)と言って。

 

Kueというのはインドネシア語で「お菓子」のことを言います。包みを開けてみると見た目は「春巻き」でありました。彼女が「アンタ試してごらんよ」とせかすので、一口食べてみると、やはり春巻き。インドネシアでは春巻きはご飯のおかずではなくお菓子として扱うのであります。Kueと言って彼女が私にくれた食べ物は、春巻き以外にも蒸しパンのようなお菓子や、チョコレートが入った揚げパン。つまり春巻きはそういったお菓子と同じカテゴリーなわけです。

 

その時は昼時だったため既にご飯を炊いており、ちょうど良いおかずだとありがたくご飯と春巻きを一緒に食べることにしたのであります。

 

彼女が家を出て行ったあと、家には醤油が無かったのでTerasi(トラシー/Wikipedia)というエビ味噌を春巻きにつけて、ご飯と一緒に食べることにしました。ちなみにこのTerasi、非常に特徴的な味で、一言でいうと「臭い!!」のです。

 

それもそのはず、インドネシア料理には頻繁に使用される独特の調味料ではあるものの、エビを発酵させて常温で保存するもので、到底日本人には受け入れられない味です。ところが、Tinyさんの料理で慣れているせいもあり、私はこういったものも平気で食べることが出来るようになりました。

 

数分後、Tinyさんがまた私の家にやってきました。私の家に圧力鍋があり、それを借りるためです。彼女は私の圧力鍋がとてもお気に入りで、私にご飯を与えて彼女が圧力鍋を借りるという取引は彼女との間でしばしば行われておりました。今回の春巻きもその取引の一つだったわけです。

 

Tinyさん、食卓にある私の春巻きを見て驚いて言いました。「アンタいったいどうしたんだい!! KueとNasi(ごはん)を一緒に食べるなんて!! しかもTerasiつけてんのかい!?」と。

 

「ええ、何か?」

 

Tinyさんは圧力鍋を手にすると、無言でそそくさと私の家を出てゆきました。その後、2,3人の女性たちが私を見学に来ました。隣で彼女と一緒にケータリングの調理をしている女性たちです。

 

何かひそひそ話をしながら家を出た後、また違う女性たちが数人見学に来ました。今度は何をささやき合っているのか聞き取ることが出来ました“Apa itu~!?”(なにあれ~!?)。

 

仮に誰かがバームクーヘンに赤味噌をつけ、ご飯と一緒に食べているのを私が目撃したら同じことを呟くでしょう。”Apa itu~”と。

 

その後もTinyさんはよく料理を持ってきてくれました。料理の味はますます冴えわたり、だんだん圧力鍋が隣に出張に行く頻度が増えてまいりました。しかし春巻きを最後に彼女が私にKueを持ってきてくれることはありませんでした。

 

異文化の壁、まだよじ登っている途中です。

 

 

味も見た目も春巻きにしか見えません。醤油がNasiでもTerasiで十分Kueます。

 

Sampai Jumpa Lagi,

Koki