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コピルアク 秘密のビジネス その3

2014.8.13

私の生まれ育った場所は横浜の戸塚という場所です。この地区は取り立てて産業というほどのものは無いのですが、一つ全国区で知れ渡っているものがあります。それは「箱根駅伝です」。毎年正月には必ずヘリコプターが実家の上空を数十分間旋廻します。

 

そうです、「戸塚の中継所」といえば皆様の中では、「ああそういえばそんなところがあったな」と思い出される方もいらっしゃるでしょう。

 

私が小さい頃は正月に箱根駅伝の応援に行ったものですが、友人の中では何人かは「将来箱根駅伝に出場し、オレは大学生になったら陸上部に入り戸塚~平塚を走るのだ!!」と本気で豪語していた人もいました。もちろん私は超運動音痴の為、駅伝はおろか100メートル走も苦痛でしょうがなかったので、そんな大それた夢は持ちようもなかったのですが・・・・。

 

ところで彼らが自分の夢を実現させることは残念ながらありませんでしたが、箱根駅伝に出場し地元を走りたいという気持ちはよくわかります。あの沿道の応援というのは本当にすごいもので、あんな中を走ることになればそれこそ大変な名誉で、地元の名士として一生を過ごすことが出来るでしょう。もちろんこれは戸塚に限ったことではありません。あの箱根駅伝沿道の街出身の人が正月に走ることが出来れば、「オレは箱根駅伝で地元を走った」という肩書は家の表札に大きく掘り込んでもイヤミではありません。

 

これはいわゆる名誉欲というものかもしれませんが、人間でしたら誰でも持つ当たり前の欲で、もちろん誇りにしても問題ないでしょう。ところが度が過ぎればとんでもないことになります。

 

さて、先回のブログの続きです。私から得た費用を元手に拡張路線をひた走るA氏。彼はもう農作業などは眼中になく、自己の欲の赴くままにひた走ります。彼のもっとも強い欲は「お金」でしたが、当面はコピルアクの入金で満たされたことになります。

 

そして次なる欲は「権力」です。これはインドネシア人特有のものではないと思いますが、こちらにいる人というのはとかく権力を持ちたがる傾向が強いなと感じています。例えば以前こちらのブログにも書いたように、町長選挙のレベルでも猛烈に盛り上がります。選挙に負けると負けたほうが「違法だ」というようなことを申し立て、議会を占拠してしまい、挙句の果てには警察の装甲車が出張ってくるほどの騒ぎになります。負けたほうは権力がゼロになるのでたまったものではありません。

 

 

権力を持てばもちろんお金もついてくるわけですが、それ以上に「名誉」が彼の自尊心を満足させます。例えばA氏はコピルアクビジネスの拡張の為、地元で数人の若者を雇用しました。

 

また今まで空き地だったところを、ジャコウネコを飼育する場所に変え、各地からの顧客を招くことが出来るようなきれいな農園のような造りにいたしました。

 

そうなると近所の人々は「お~A氏はコピルアクのビジネスで成功した!」「すごい人だ!」という目で彼を見始めます。実際のところ彼の周りには近所の人が果物を持ってご機嫌伺いに来たり、疎遠だった親戚が遊びに来たりと客足が絶えないようになります。農業と林業だけしか産業が無いものすごい田舎で、彗星のごとくジャコウネココーヒーで日本人と取引を始めた成功者が突如現れたわけです。

 

当然この地域ではあっという間に彼は名士となり、ちょっとした権力者の扱いを受けるようになります。彼はもうお金もあり、周りからチヤホヤされるため有頂天になります。まさに極楽です。

 

ところがです。こういった状況を保つためには一定の受注量を保つことが必要になります。10名近い従業員を雇い、ジャコウネコの数も増やし、土地も広げ・・・・ではさすがに注文が無い限りお金はすぐに底をつきます。

 

確かにコピルアクの需要というのはあります。世界各国から引き合いはあるのですが、それほど莫大な量ではありませんし、もちろんA氏の競合はインドネシア中にたくさん存在します。

 

「作れば作っただけ売れる・・・・」

 

しばらくすると彼のこの妄想は現実に打ち砕かれることになります。私のところにもしばしばやってきて「安くしておくから豆を買わないか?」と持ちかけられることもありましたが、必要が無ければ全て断っていました。

 

そろそろ彼の絶頂に陰りが見えたころのこと。相棒のイカサン経由で驚くべき情報が入りました。「A氏が1トンのジャコウネコのフン付豆を準備中だ!」というものです。いくらなんでもこの数字はあり得ない数字です。もちろん彼が飼育しているジャコウネコでは到底賄いきれない数量で、これ以上ジャコウネコを増やし、従業員を増やすのはあまりにもリスクが高いのは明らかです。

 

どうなってるんだ??

 

気になって彼の養猫場に行ってみることにしました。そこで目にした光景は、かなり多くの村人がジャコウネコのフンを洗ったり干したり、脱穀したりしている風景でした。

 

どうやら1トンというのは伊達ではなかったようで、ジャコウネコの数は増やしてはいないものの、フン付豆をどこかから購入して精製をしているとのことでした。

 

「作れば売れる・・・・」彼の言葉が頭をよぎりました。本当だったんだ・・・・。

 

A氏はふんぞり返ってみんなが作業をしているのをボーっと眺めるだけ。まるで市長が下々の議論をつまらなそうに聞いているという風情で、彼には一種の貫録さえ漂っていました。

 

帰り道、相棒のイカサンと「将来彼が大きくなれば我々に豆を売ってくれなくなるかもしれないね・・・」と話していたのを覚えています。

 

我々に豆を売ってくれない。

 

確かにそれは現実になってしまいました。しかしその理由は彼が大きくなったからではありませんでした。

 

次回へ続きます。

 

 

私の後ろには広大なサトウキビ畑が広がります。これはジャコウネコのフンを精製しているPatiの風景ですが、ジャコウネコを飼育しているKeletは広大な水田が山間部に広がっています。

 

Sampai Jumpa Lagi,

Koki